この春、大学生になる君のためのブックガイド(+ウェブサイトガイド)

f:id:beethoven32111:20180209103155j:plain

関西学院大学

 僕は大学生である。この春から3回生になる。この2年間、あまり劇的なことは起こらなかったが、些細な面倒ごとは山ほど経験した。そんな2年間どうにかこうにかやり過ごしてきた今、始まる前に知っておきたかったと思う情報がいろいろとある。そのなかでも今回は、入学する前か入学した直後に読んでおけば良かったと思う本を何冊か紹介していく。対象は基本的に文学部生だが、文系の学生なら多少なりとも役に立つのではないかと思う。

 その前に、まずは本を読むことの重要性について少しだけ語らせてほしい。

 驚くべきことに、文学部の学生の大半はほとんど本を読まない。ライトノベルでさえ読まないという人が多い。授業の課題で仕方なくという以外で、自発的に本を読もうとしないのだ。僕の通っている大学のレベルが低いからかもしれないが、他大学に通う友達に聞いてもどこも似たようなものらしい。

 もちろん、本を読むか読まないかというのは基本的に個人の自由である。年収ウン千万以上の人は本をたくさん読むとかいう情報を見かけることもあるが、ただ本を読めば年収が上がるかといえばそんなわけはない。まあ当たり前のことだけど。それに、本を読むにはお金も時間もかかる。お金は図書館を利用すれば何とかなるにしても、時間のほうはどうにもならない。大学生というのは一般的なイメージに反して普通に忙しいものだし、空いた時間は他のもっと面白い娯楽に充てたいと思うのが自然だろう。

 とはいえ、大学というのは、のほほんと過ごしているあいだに気づいたら卒業しているというほど甘いところではない。日本の大学は入るのは難しいが卒業するのは簡単だというのを聞いたことがあると思う。海外の大学に比べるとそうなのかもしれないが、だからといって舐めてかかると痛い目にあう。日本の大学でも、調子に乗って怠けたせいで留年したり卒業できなかったりする人は一定数いるのだ。自分だけは大丈夫だと思っている人がいちばん危ない。

 そうならないために、友達を作って協力し合う、規則正しい生活を送って授業にちゃんと出席する、バイトを入れすぎない、などなど様々な方法があるが、特に文学部生の場合は、文章の読み書き能力を高めるというのが極めて有効である。そのためには、やはりできるだけ多くの本を読むということが欠かせない。多読しているうちに文章を読むことに対する苦手意識が薄れていくし、文の構造や語彙に関する知識が増えて書くのも上手になっていくものである。

f:id:beethoven32111:20180209111009j:plain

実際はパソコンで書く

 大学に入学するまでは、きっと1,000字を超える文章を書くことすら稀だろう。しかし、大学ではひと月に平均3,000字は当たり前だと思ったほうがいい。さらに文学部生であれば、卒業するためには2万字や3万字の「卒業論文」というものをまとめる必要がある(まともな大学なら)。さらに、大学ではテストでも文章を書かなくてはならない。高校までは覚えた知識を問われるだけで済むが、大学では覚えた知識を使って文章を書くことを求められる(これを論述という)。

 そんな大学という場所で、少しでも良い成績をとるために、あるいは成績はどうでも良いとしても、少しでも楽に単位をとるためには、文章能力(リテラシー)を高めるのがいちばん効果的だ。日ごろから文章を読み、そしてできれば文章を書いていれば、授業の課題で分厚い本を読まされたり、数千字に及ぶレポートを書かされたりしても、決して怯むことがなくなるだろう。少しは本を読む気になっただろうか。いや、こんな長ったらしい前置きをここまでちゃんと読んでくれた人は、きっと常日頃からリテラシーを高める努力を怠っていないだろう。

 前置きが長くなるのは僕の悪い癖だ。いい加減、本題に入ろう。さて、ここまで本を読むことの重要性についてくどくどと語ったわけだが、それでもやっぱり本を読むという行為は非常に骨が折れる。だから、今回は10冊も20冊もリストアップしてこれから大学生になる人たちを圧殺しようとはしない。たった5冊。それもウンと読みやすい5冊だ。なかには小説も含めておいた。なんと良心的なのだろう。この5冊を読めば君はスタートダッシュの時点でほかの大学生に大きな差をつけられる。いわば「強くてニューゲーム」である。

私もできる西洋史研究―仮想(バーチャル)大学に学ぶ』井上浩一

私もできる西洋史研究―仮想(バーチャル)大学に学ぶ (大阪市立大学人文選書)

私もできる西洋史研究―仮想(バーチャル)大学に学ぶ (大阪市立大学人文選書)

 

  大学に入ったら、「レポートの書き方」的な本をたくさん紹介されると思う。だが、この本が紹介されることは少ないのではないだろうか。僕の場合はそうだった。多分、厳密に言えば「レポートの書き方」を教えてくれる本ではないからだろう。しかし、この本以上に優れた「レポートの書き方」的な本に僕は出会ったことがない。大学が勧めてくるレポート本というのはなぜだか知らないが、レポートを書く心構えだの小手先のテクニックだのしょうもない情報ばかり書いてあるものばかりである。しかしこの本は違う。この本は、本当に初歩の初歩から、まずテーマを決めて、そのテーマについて文献を調べて、文献を読んで、研究としてまとめていく、という行程を懇切丁寧に教えてくれる。この行程を忠実に模倣することができれば、4年間怠け続けたダメスチューデントを易々と飛び越えていけることだろう。なお「西洋史研究」となっているが、人文系の学問であれば何でも応用できる。

ライフハック大全』堀正岳

  続いてはこの本。一見すると大学生活とは何ら関係のない本のように見えるだろう。確かに、基本的には社会人に向けて書かれた本である。しかし、ここに書かれているライフハックの数々は大学生活においても効果てきめんのものばかりである。4年しかない大学生活を最大限に活用するためには、賢く生活するための技術を身に着けることが欠かせない(痛い目を見てからでは遅い)。さらに、大学生活を終えたら待っているのは長い社会人生活である。好むと好まざるとにかかわらず、私たちは人生の大半を社会人として過ごすのである。だったら少しでも有意義に過ごしたいと考えるのが当然だが、大学4年間をダラダラと過ごしてきた怠け者が、会社に入ったからといって急に生まれ変わってテキパキと動ける人間になれるわけもない。逆に、ライフハックを活用して大学4年間をだれよりも有意義に過ごすことができたのならば、自信をもって社会に出ていくことができるだろう。

『図書館に訊け!』井上真琴

図書館に訊け! (ちくま新書)

図書館に訊け! (ちくま新書)

 

  はっきり言おう。ボンクラ学生とはこの本を読んでいない学生のことである。大学生たるもの図書館を利用しないということはあり得ないことなのだが、恐ろしいことに図書館に行ったことがない学生というのもこの世にはいるらしい。しかし仮に図書館を利用している学生でも、その真価を引き出せている人はそう多くないだろう。ではどんな人が図書館を骨の髄までしゃぶりつくすことができるのか。ずばりこの本を読んだ人である。地元の図書館に行けば分かることだが、大学図書館というのは蔵書、設備、サービスすべてにおいて極めてハイレベルなのである。これを活用できるかどうかに大学生活のすべてがかかっていると言っても過言ではない。というか真理である。分かったらさっさとこの本を読め! そして図書館に訊け!

『批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義』廣野由美子

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

 

 フランケンシュタインって、何のことか知ってる? え、「知ってるよ、怪物のことだろ」って? ダメスチューデント! フランケンシュタインは、怪物のことじゃない。怪物を生み出した、博士の名前なの。……えー、これを勘違いしている人がたくさんいる。実は、フランケンシュタイン博士が生み出した怪物には名前がない。作中では単に「怪物」としか書かれていないのだ。『フランケンシュタイン』は1818年にメアリー・シェリーという人が書いた小説で、世界初のSF小説と呼ばれることもある名作である。この新書は、その『フランケンシュタイン』を様々な批評理論を応用することで多様に読み解いていく本である。批評理論について説明するとまた長くなるので、気になる人はぜひこの本を読んでほしい。そもそも「批評理論とは何か」を知るための本なのだから。ひとつのテクスト(文章)がいかに多義性をはらんでいて、読み手次第でいかに変貌を遂げるものなのかということを教えてくれる。そう、文章とは、優秀な読み手のもとに渡ったときに初めてその真価を現すものなのである。文章が持つ魅力を最大限に引き出すことができる優秀な読み手になりたいものである。

『砂漠』伊坂幸太郎

砂漠 (新潮文庫)

砂漠 (新潮文庫)

 

  ここまで割とおカタい本ばかり紹介してきて、ウンザリしている人もいるかもしれない。そんなあなたに僕からのプレゼントだ。日本には、高校生活をテーマにした物語は山ほどあるけれども、大学生活をテーマにしたものは少ないようである。そんななかで、この小説は、大学生活を魅力的に描いた数少ない物語である。かけがえのない仲間と過ごすかけがえのない時間の素晴らしさ。若さというもののもつ光と陰。根拠のない万能感と由来のない不安感の入り混じる青春の終わり。春から夏へと変わりつつある季節をいかにして楽しむか。そう、大学生活とはまずもって楽しむべきものなのだ。僕はそれをいちばん伝えたかった。不思議なことに私たちは、あまり楽しすぎるのも良くないかもしれない、という感情を抱くことがある。でもそんなことはないと思う。人生、楽しい時間ばかりではない。人生において、何の屈託もなく楽しむことができる時間があるということは、砂漠に雪が降るのと同じくらい奇跡的なことなのだ。だからその奇跡を自分の目で、耳で、心で味わう以外に何をするべきだろう。

おまけ:大学生のためのウェブサイトガイド

 インターネット時代に生きる大学生として、ウェブを活用せずに大学生活を送るのは愚の骨頂である。しかし、ウェブの情報は玉石混交、いや、玉が1に対して石が9というのがいいところだろう。意図しない誤情報はある程度仕方がないが、ウェブの誤情報の大半は意図的なものである。その根源にあるのはすべてお金稼ぎである。商品を売るために嘘の情報を流したり、アクセス数を稼ぐために人々の感情を煽る、そういったろくでもないことがウェブでは日常茶飯事だ。

 だから重要なのは、手広く情報を集めるよりもむしろ、情報を制限することだ。信頼できるソースと信頼できないソースを弁別し、信頼できるソースの情報だけをあてにする。それが、ウェブに使われるのではなく、ウェブを使うための近道のひとつである。もちろん、信頼できるソースだと判断しても、ひとつひとつの情報を再検討するのを怠ってはいけないが。

 そこで、人生の多くの時間をウェブに費やして酸いも甘いも見てきた僕が、いくつかのサイトを紹介したいと思う。ちなみに、ニュース系のサイトは紹介しない。ニュースを知りたいなら素直に新聞を読みなさい。新聞は信頼できないなどと言っていたら、まともな大人に笑われますよ。笑わない大人がいたら逆に笑ってさしあげなさい。

 読書猿

readingmonkey.blog45.fc2.com

 最近、以前よりは知名度が高くなってきたこのサイト。とにかくすごい。というかもはや凄まじい。このサイトをたったひとりの人が運営しているというのだから信じがたい。文学、哲学、科学、数学、経済学、心理学、などなどありとあらゆる学問分野について恐ろしいほど詳しくいろいろなことが書かれている。僕などが語るのは本当におこがましいので、一度自分の目で確かめてほしい。管理人さん自身がまとめられたオススメ記事リストがあるので、それを一通り熟読すると良い(補足:学生向けならこのリスト→「学生時代に知りたかった」と言われた記事をまとめてみた 読書猿Classic: between / beyond readers)それだけで半端な本を数冊読むよりもはるかに有意義だ。

わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

 このブログは、まあ読書好きにとっては一般常識と言っても良いが、この記事の対象者となる人は知らないかもしれないので一応紹介しておこう。このブログの魅力は何と言っても文章力の高さである。書評ブログというのはたいてい、本の内容のへたくそなまとめとそれに対する稚拙な感想が、小難しい文章で長々と書かれているだけのつまらないものであるが(僕のブログのことである)、スゴ本さんは、紹介する本をまだ読んでいない人にとっても既に読んだ人にとっても面白い文章を書けるという奇跡的なバランス感覚をお持ちの方である。羨ましい限りだ。この人の最新記事で取り上げられている本を毎回ちゃんと読めばそこいらの自称読書家を鼻で笑えるレベルにはなる(もちろん、そんなことをする意味はない)。

シロクマの屑籠

p-shirokuma.hatenadiary.com

 精神科医の筆者さんがいろいろなことについての考えを書いていらっしゃるブログです。僕は常々オリジナリティのある意見を持とうと必死なのにもかかわらず、結局はありきたりな意見かもしくはありきたりな意見の逆張りしかできない哀れな人間だが、シロクマさんのブログを読むと、独自の視点を持っている人というのはこういう人なのだなと羨望の念を覚えると同時に自らの卑小さに肩を落とす。でも面白いから読んでしまう。シロクマさんの記事の良いところは、読んでいて気が楽になると同時に勉強にもなるところ。決して難解な文章ではないので読みやすいがちゃんと中身もぎっしりと詰まっている。文章だけ難解ふうでそのくせ中身がないブログは見習うべきである(当然、僕のブログのことである)。

英語上達完全マップ

英語上達完全マップ

 大学生たるもの英語を勉強しなければ……でも勉強の仕方が分からない、とりあえず、受験勉強と同じやり方じゃだめなのはわかるけど……、そんな君に断然おすすめなのがこのサイトだ。英語業界では有名人である森沢洋介さんが確立したメソッドがなんとタダで読めるのである。しかも、オリジナルの教材を売っているのにもかかわらず、おすすめ教材リストには自著以外の本ばかり載っている。なんて良心的なんだろう。僕も現在このサイトを参考にしながら頑張って勉強している。ちなみに、副読本として以下のサイトも参考になる。

学年ビリのアホが1年半でTOEICスコアを300点から840点に上げた英語勉強法の話 - Qiita

英語上達完全マップを10ヶ月やってみた

Amazon

Amazon CAPTCHA

 もうね、アホかと。バカかと。このご時世 Amazon 知らんやつなんておらんわと。まあそう言わないでください。別に Amazon の回し者ではございません。ただ、Amazon Student 会員になれば、本を買ったときにポイントがなんと10%も溜まるということを伝えたかっただけなんです。学生たるものたくさん本を読みなさい。そして買うなら Amazon です。2,000円の本を10冊買えば2,000ポイント溜まります。もう1冊2,000円の本を買いましょう。ちなみに、たまに教科書ポイント15%キャンペーンとかやることもある。ところが教科書以外の本もたくさんポイント15%になる。それを良いことに僕は本を買いまくって見事に金欠になった。でもポイントでまた本が買えたので嬉しかった。Amazon Student ならなんと年額1,900円だ! まさか月にたった159円ぽっち払えないなんていう人はいないな? ジュース2本我慢すれば加入できる。そしてなんと映画や音楽もたくさん楽しめる。入らないほうがおかしい。

大学生は楽しい

f:id:beethoven32111:20180209125744j:plain

美人だけに許された本の読み方

 いかがだっただろうか。こんな記事を最後まで読んでくれて、まずはありがとう。この記事ではできるだけ他では紹介していないような本を取り上げるように努めた。だから、ここで紹介されている本だけで満足するのではなく、他の人が書いている記事もたくさん参考にしてほしい。そして誰よりも充実した大学生活を送ってほしい。

 このご時世、教養なんて言葉は古臭いと思われている。僕自身、教養という言葉を振りかざす人間は好まない。しかし、それでも教養は素晴らしい。教養は、偏見や誤謬から私たちを解放し、自由にしてくれるものだからだ。そして教養を身に着けるためには、まず本を読むこと。本でしか得られないものはまだまだたくさんあるはずだ。

 しかし案内なしに読書の世界へ入り込んだら迷子になってしまう。迷子になるのも良い経験かもしれないが、限られた時間を有効に使うためには、最短ルートを進みたいものである。そのためには先達の知恵を借りるのがいちばん良い。だからいろいろな人たちが書いたブックガイドを読むべきである。機会があれば、僕が参考にしている書評ブログをたくさん紹介したいと思う。ちなみに、本の最後には「参考文献」としてたくさんの本の名前が列挙されていることがある。これは地上で最も優れたブックガイドである。ぜひ活用してほしい。

 そして最後に、希望する大学に合格することができた人、おめでとう。夢にまで見た大学で最高のキャンパスライフを送ってほしい。合格できなかった人、よく頑張った。たしかに、第一希望に行けなかったという事実は長いあいだ君を苦しめるだろう。しかし苦しみに押しつぶされて何もしないのがいちばんいけない。僕自身、第一希望の大学には行けなかった。そして、その挫折からなかなか立ち直れず、無駄な時間を過ごしてしまった。今では、第一希望に行けなかったという後悔よりも、その失敗に打ちのめされて何もしなかったという後悔のほうが大きくなっている。だから、僕を反面教師にしてほしい。きっと君は大丈夫だ。こんな長い記事をここまで読むほど勉強熱心なのだから。

 さて、それでは僕は自分の人生を立て直しにかかることにする。

 さらば。いつかどこかで会おう。